「コンパルソリー」別名「規定」俗称「コンパル」「スクール」といいます。1991年から競技から廃止され、バッジテスト項目からも3級以上から廃止されてしまいました。
コンパルは競技から廃止されてしまいましたが多くのコンパル時代のOBが、フリーのエッジ使いの基本はコンパルにあるので、今の選手はスケーティングやステップのエッジ使いが下手になっていると言っておられることは、ある程度もっともなことです。
私の記憶からもだんだん遠のきつつあるので、ここらで私の知る限りのことをまとめてみようと思いました。
でもここではあまり技術的に細かいことを書いても、文章ではよくわからないと思うので、技術的にはごく基本的なことと、コンパルにまつわる四方山話を書きます。
① 6点満点の話
今シーズンから本格的に新採点システムが採用されましたが、旧採点方法は6点満点でしたよね、なぜ10点満点でないと思いますか?
それはコンパルソリーの採点方法から来ているからです。
コンパルソリーでは3回トレースを描きますが、右足3回、左足3回と計6回円を描きます。それぞれの円が1点満点で6回描くので6点満点となるのです。これがフリーの採点にも採用されたため6点満点なのです。
② コンパルソリーの課題数
なんと41課題もあったんですよねー。ここで全部載せると後、読む気なくすと思うので最後に資料としてつけます。
ちなみに、チェンジ(別名サーペンタイン)は片足で円+半円、つまり片足で1.5周滑ります。したがってチェンジは円が3つになります。またロッカー、カウンターも円が3つになります。
ワンフットエイト、およびパラグラフは途中でチェンジを入れて、片足で円2つ分、つまり2周します。したがってパラグラフの最初のけりはかなり強くけり、またスピードもつけないといけないため、最初のターンを高速でしなくてはならず、ものすごく難しいです。したがっておもに6,7級の課題、および国際試合の課題になっています。
③ コンパルソリーの靴
今は皆さん靴は基本的に1足ですよね。しかし当時はコンパル専用の靴(ブレード)があったためみんな(1回生はコロネーションで両方兼用していたので、基本的には2回生以上)靴を2足持っていました。
だから遠征試合の時や、別のリンクで練習するときなんか靴を2足もってうろちょろするので重いのなんのって・・・。(ちなみに当時の練習場所、梅田リンクには阪大、経大、関学共同の部室があり普段は、靴は置きっぱなしでした)
さてコンパル用のブレードってどんなんでしょう。
まずジャンプは飛ぶ必要がないのと、スリーターンやブラケットターンの時にトウのひっかき跡がついたりするのをさけるため第一トウがありません。
次に、ダブルエッジ(エッジがフラット気味になるとインエッジとアウトエッジの2本のラインが氷につくこと)は減点の対象となるため、エッジの凹のカーブがほぼフラットになっています。
当時コンパル専用のブレードはウイルソン社のテストと言うエッジが一般的でした。
でも貧乏学生にはなかなか買えないので、2年になって1級取ったら、ファントムかシールのエッジを買ってフリー用の靴を作り、1年生の時はいていたコロネーションの靴を、上記の特徴のエッジに改造して(第1トウをグラインダーで削り落とし、エッジをフラットに研ぎ直す)使うのが一般的でした。
したがって今のように、1年生が先輩のコロネーションのお下がりがもらえると言うラッキーなことはまずあり得ませんでした。
このコンパルのエッジは結構くせモンですよ。エッジがフラットということは、正確にエッジを倒してインまたはアウトのエッジに乗らないと横滑りを起こします。まず今の現役生のレベルでこのエッジを履いてもふらふらと横滑りをして何も描けないと思います。この靴を履いてコンパルソリーというものはしっかりエッジを倒して描くんだと学んだもんです。
④ サークルの直径
サークルの直径って、おおむね身長の3倍って決められていることをみんな知ってますか?
つまり男性と女性、子供でサークルの大きさは違うと言うことですよ。
最近コンパルの練習スペースが当時のように確保するのが難しいので、よく合同でみんな同じ大きさの円で練習してますが、あれは本当は間違いです。
ちなみにループの直径は身長とほぼ同程度です。
⑤ アイスコンパス
当時コンパルで3回描くトレースは、学生レベルでも10cm以内、選手権クラスでは3~5cm以内にそろっていないとだめでしたので、いかに正確な円でかつそろった円を描くかということが重要でした。
そのため早朝の練習および製氷後は、まずアイスコンパスというコンパスの化けモンで氷にガリガリと円形の傷を付けてその上を正確にトレースするという練習をしてました。
アイスコンパスを使わない普段の練習でも、まずロングアクシスを引いてセンターを決めたらそこから右と左でエッジ18歩分数えて(その人のエッジ18歩分が身長の約3倍相当になるので)またその円の中心から上下に9歩数えて、正確な円を自分で描いて練習するのが普通でした
私は今でも皆さんがサークルの練習する時は、このようにまず正確な円を描いて練習することをおすすめします。
⑥ 課題練習で重要なこと
これは最近気づいた重要なことです。昔は1級の課題は1~4番でしたので、こんなこと考えもしなかったのですが・・・。
ある日、1級が受かった後輩の一人が、2級の課題を練習し始めようとしていたのですが「課題の4番が全然できないんです」と相談をもちかけられた。実際見てみるとかなりひどい状況である。それで「どのくらい練習したのと」と聞いたら、「1級が受かってからですからまだ1ヶ月くらい」と当然の用に言いました。???ショックを受けてしまった。そうなんです1級の課題は1~3番までなので4番は全く練習していなかったのです。
これは大きな間違いです。4番は3番に比べ格段、難しくなるので、3,4ヶ月も全く練習して無くて、いきなりできる物ではありません。このような練習方法ですと苦労するのは目に見えています。
正しい練習方法は、1級のエレメンツの練習時に1~3番でコンパルの練習を止めてしまうのではなく、4番まで練習すること。これは重要です。逆にこれをしておけば、2級受けるとき、楽になるでしょう。
⑦ 練習時間
2時間半の部練のなかでコンパルの練習時間は1時間くらい締めてました。
たとえば2級の課題をやるとき
基本のサークルで足慣らし 5分
フォアのサーペンタイン 右足スタート10分、左足スタート10分
フォアアウトスリー 右足スタート10分、左足スタート10分
フォアインスリー 右足スタート10分、左足スタート10分
ってな感じです。
右足左足の両方のスタートで練習している意味わかりますか?。特に2級の課題は、普通のサークルと違い右足スタートと左足スタートで全然違う動きになるのでのそれぞれ別個に練習しないといけません。つまり6課題あるのと同じなんですよ。
このため当時は2級合格が1つの鬼門で、2級を取るため(関カレA級に出るため)みんな必死に練習したもんです。 ちなみにその続き(つまり当時の部練構成)は
フリー靴への履き替え5分(前述の様に靴が2足あったため)
ジャンプ練習40分
スピン練習20分
円クロス10分
最終スケ-ティング10分
昔はステップの練習は部練ではやってなかったんですよね。ステップは基本的に自主トレでやることになってました。
⑧ 3級の課題
さっき2級の合格が鬼門であると書きましたが3級はもっと難しく課題はバックサーペンタイン、ファアアウトループ、フォアインループ、フォアアウトダブルスリー、フォアインダブルスリーで、意外に問題なのがバックサーペンタインで、2けり目はバックインのスタートとなり、普通でも1周回って帰ってくるのが精一杯なのに1周半もしないといけないのです。またループもすぐかける人もいますが、普通のサークルと全然違った動きをするので、なかなか描けないもんです。ということで3級合格も至難で、このため全日インカレに行くのはなかなか難しかったです。ちなみにループの形知ってますよね(下記)。
聞くところによるとループは来シーズン3級のステップで復活するとか言う話ですね。
⑨ 正確なスリーターンとブラケットターン
昔はリンクではいつくばり、氷に顔を貼り付けている姿をよく見ました。別に落としたコンタクトを探しているわけではありません。ターンのトレースをチェックしているのです。特にスリーターンとブラケットターンでは正しく描けているかをチェックしているのです、正しいターンの先端部のトレースを下図に示します。
ちなみにロッカーターンはスリーで入り、ターン後は反対方向のカーブにブラケット後半のカーブででる。カウンターターンはブラケットで入り、ターン後は反対方向にスリーのカーブででる。
絵で示すと下のようになりいずれもコンパルでは上級のターンです。
あとがき
ということで、コンパルソリーが苦手な皆さん、当時に比べれば今のコンパルなんて楽勝ですよ。ちょこっと真剣に連取すればすぐ上手くなります。
また案外コンパルの練習もおもしろいもんですよ。
ということでがんばって下さい。(2005年1月記)
資料:課題の種類
セミサークル(フォアイン、フォアアウト、バックアウト、バックイン)
No.1 フォア・アウト・サークル
No.2 フォア・イン ・サークル
No.3 バック・アウト・サークル
No.4 バック・イン ・サークル
No.5 フォア・チェンジ(サーペンタイン)
No.6 バック・チェンジ(サーペンタイン)
No.7 フォアスリー・フォアスリー
No.8 フォアアウト・スリー・バック・インスリー
No.9 フォアイン ・スリー・バック・アウトスリー
No.10 フォア・アウト・ダブルスリー
No.11 フォア・イン ・ダブルスリー
No.12 バック・アウト・ダブルスリー
No.13 バック・イン ・ダブルスリー
No.14 フォア・アウト・ループ
No.15 フォア・イン ・ループ
No.16 バック・アウト・ループ
No.17 バック・イン ・ループ
No.18 フォア・アウト・ブラケット・バック・イン ・ブラケット
No.19 フォア・イン ・ブラケット・バック・アウト・ブラケット
No.20 アウト・ロッカー
No.21 イン ・ロッカー
No.22 アウト・カウンター
No.23 イン ・カウンター
No.24 フォア・ワンフットエイト
No.25 バック・ワンフットエイト
No.26 アウト・チェンジ・スリー
No.27 イン ・チェンジ・スリー
No.28 フォア・チェンジ・ダブルスリー
No.29 バック・チェンジ・ダブルスリー
No.30 フォア・チェンジ・ループ
No.31 バック・チェンジ・ループ
No.32 アウト・チェンジ・ブラケット
No.33 イン ・チェンジ・ブラケット
No.34 フォア・パラグラフ・スリー
No.35 バック・パラグラフ・スリー
No.36 フォア・パラグラフ・ダブルスリー
No.37 バック・パラグラフ・ダブルスリー
No.38 フォア・パラグラフ・ループ
No.39 バック・パラグラフ・ループ
No.40 フォア・パラグラフ・ブラケット
No.41 バック・パラグラフ・ブラケット
(各課題にはそれぞれ、右足:aスタートと左足:bスタートがある。)